オックスフォード工場でクラブマン最後の生産車両がラインオフ
2024年2月5日(月曜日) 、英国のオックスフォード工場で、MINIクラブマン(F54)の生産が終了した。現行型の完了ではなく「クラブマン」そのものが廃止となる。
つまり、2024年からデリバリーが始まる新世代MINIにクラブマンは存在しない。その役目は、より大きなボディを持つSUVの「MINIカントリーマン」または、サイズダウンとなるがBEV専用のコンパクトSUV「MINIエースマン」が引き継ぐこととなる。
記念すべきクラブマン最後の生産車両は「クーパーS」、ボディカラーはクラブマン専用の「インディアンサマーレッド」
左:1969年にデビューした元祖クラブマン
最後の生産車両がラインオフしたこの日に、改めてクラブマンの軌跡を簡単に振り返ってみよう。
クラブマンの元祖となるモデルは、55年前の1969年(昭和44年)にデビュー。その特徴を引き継いだ現代版クラブマンの初代モデル(R55)は、BMWグループによって2007年に発売。2015年に「フルモデルチェンジ(詳細記事)」を実施した二代目(F54)を投入し、2019年に「マイナーチェンジ(詳細記事)」したモデルが最後となる。
そのユニークなスタイルとリアの観音開きドア(スプリットドア)により、クラブマンファンを獲得。今や世界中で認知されるモデルとなった。
左:二代目クラブマン(F54) 右:初代クラブマン(R55)
1969年の発売以来、110万台以上を生産。その半数となる現代版クラブマン(R55/F54)は、オックスフォード工場で生まれた。50ヵ国以上に輸出され、英国で人気のボディカラーは「ミッドナイト ブラック メタリック」となっている。
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現代版の初代クラブマン(R55)
1982年に生産を終了した元祖クラブマンは、25年間の休止期間を経て復活。BMWグループの手によって2007年に生まれ変わり、第二世代目MINIのモデルラインアップに再登場を果たした。
MINIの基幹モデルである3ドアハッチバック(R56)の全長を引き伸ばし、後部座席や荷室のスペースを拡大したクラブマン(R55)は、現代的な美学を実現しながらも、55年前に生まれた元祖モデルの特徴的なプロポーションとリアの観音開きドアを持っていた。
しかし、観音開きのドアを現代の車両で実現することは、オックスフォード工場のエンジニアにとって非常に困難な課題であった。
「リアライトを遮ることなく両方のドアが常に完全に開くようにする必要があり、これは法的な要件でした。これを達成するには、あらゆる気候条件でドアが正しく機能することを保証するための微調整と、ガスストラットシステムの開発が必要でした。」と、ドアシステムの開発チームの一員だったエンジニア「ガイ・エリオット」氏は語る。
運転席側だけにある後部座席用の補助ドア「クラブドア」
さらにクラブマン(R55)を独創的にしている要素として「クラブドア」の存在がある。後部座席に3人座ることが出来る初めてのMINIとなるクラブマンは、2ドアでありながらも後席への乗降りを容易にするため、ユニークなクラブドアを導入した。クラブドアは後部でヒンジで固定され、車の片側にだけある非対称な補助的ドアとなっている。
ガイ・エリオット氏は「運転中の風切り音を最小限に抑えるために、フロントドアとクラブドアが同じ高さになるようにする必要がありました。2つのガラスシステムは慎重に制御する必要があり、最も重要な防水性を損なわないために、正確な制御手段が必要でした。」と語る。
様々な難題をクリアして誕生した初代クラブマン(R55)は、今もなお多くのMINIファンに愛されている。
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最高傑作!?二代目クラブマン(F54)
期間限定生産の特別仕様車「サヴィル・ロウ・エディション」
クラブマンは2015年の「フルモデルチェンジ(詳細記事)」でボディサイズを拡大し、二代目モデル(F54)として大進化を果たした。
観音開きドアのバックドアを継承し、そこに4つのフルサイズドアとMINIブランド初の8速ATにより、実用性と走りの質を大幅に向上させた。
他とは一線を画す個性的なスタイルに、5人が普通に乗車できるスペースをもったモデルとして、MINIに新たな顧客層をもたらした。
装備もBMWにならってハイクラス志向となり、電動パーキングブレーキや電動レザーシート、バックライト付きドアベゼルを備えたオプション「MINI Yours インテリア スタイル」などが設定された。
2つのディーゼルエンジンから選択できる特別仕様車「アントールド・エディション」
2016年には初の4輪駆動モデルである「クラブマン クーパーS ALL4(詳細記事)」を発売。国内ではクリーンディーゼルエンジンを搭載した標準モデル「クーパーD」が売れ筋となった。
二代目MINIクラブマン(F54)について、当時のプロジェクトリーダーであるエルンスト・フリッケ博士は次のように述べている。
「私たちは二代目クラブマンを『私たちの最高傑作』、つまり高品質と洗練の新たな基準を備えた究極のオックスフォード製MINIと呼びました。」
最後の特別仕様車「ファイナルエディション」
クラブマンの終了を記念した特別仕様車「ファイナルエディション(詳細記事)」を2023年10月に発売(国内)。モデル専用デザインのアクセサリーやホイールなどを特別装備して、最後に相応しい一台となっている。
1969年に誕生した元祖クラブマンにちなんで、世界生産台数は「1969台」。そのうち220台が国内に導入された。発売当初から注目を集め、クラブマンへの愛着の大きさを感じさせた。
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