人気「MINI 5ドア ミニクーパーS」の試乗レポート/評価
2014年の発売以来、使い勝手の良いパッケージングで大人気の「MINI5ドア(F55)」。MINIならではのワクワクするコンパクトなスタイルと、利便性を兼ね備えた万能モデルです。従来からMINIファンをはじめ、欧州のオシャレなコンパクトカーを乗り継いでいる方や、国産のコンパクトカーからステップアップしたい方にもお勧めです。
そんな大注目の「MINI5ドア」を1日借りることが出来ましたので、試乗レポートをお届けします。試乗車は2リッターのガソリンターボエンジンを搭載したスポーツグレードの「クーパーS」です。
当サイトのデモカー「MINI3ドア クーパーSD(ディーゼル)※執筆時点」との違いや、実燃費の比較もしていますので、「ガソリンとディーゼル」でお悩みの方も、ぜひ参考にしてください。
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Contents
- MINI5ドアって、どんなクルマ?
- 試乗車は、MINI5ドアの「クーパーS」
- エクステリアを徹底チェック!
- インテリアを徹底チェック!
- 純正ナビゲーションを徹底チェック!
- ドライビングフィール
- 実燃費を検証! 走行テストの結果
- クーパーSDとの燃料費を比較
- 総評
- 価格とスペック、お勧めオプション
MINI5ドアって、どんなクルマ?
楽しさはそのままに、家族でも使える待望のMINI
左:MINI3ドア(F56) 右:MINI5ドア(F55)
まずはMINI5ドアの成り立ちをササッとおさらいしましょう。MINI5ドア(F55)は、MINI3ドア(F56)の全長を16.5センチ引き伸ばし、後部座席用のドアを追加して利便性を高めたモデルです。第3世代MINI(F系)のまったく新しいモデルとして、2014年10月に発売されました。MINI5ドアとしては当モデルが初代となります。
MINI5ドアの車幅や搭載しているエンジン、オプション、ボディカラーは、MINI3ドアと全く同じです。車両価格はMINI3ドアより18万円アップとなっています。
これまでMINIの主役を担っていたMINI3ドアは、後部座席の乗降りをする際には前席を倒してスライドさせる必要がありました。そのため、ファミリーで日常的に使うモデルとしては使い勝手が悪く、MINIに乗りたくても、購入をあきらめざるを得ない方が多くいらっしゃいました。
そこに登場したのが、このMINI5ドアです。MINI3ドアのスタイルをできるだけ損なわずに、後部座席を使いやすくして、なおかつ荷室も広くなっています。まさにMINIに乗りたかったお父さんお母さん「待望のモデル」といえます。もちろん、ファミリーユースに限らず、後部座席に荷物をのせたり、友達とワイワイ出かける機会の多い方にとっても便利なモデルです。
MINI5ドアのポジショニング
第3世代MINI(F系)のモデルラインアップ
MINI5ドアが発売された後、ボディがひと回り大きいステーションワゴンタイプの「MINIクラブマン」や、さらに大きなボディをもったSUVの「MINIクロスオーバー」が追加されました。
そんな大型モデルまで選べるようになったMINIのラインアップにおいて、MINI5ドアの特長は「MINIならではのコンパクトなスタイルを持った、利便性の高いモデル」といえます。
MINI3ドアは、主に1人でドライブする方の趣味車として支持を得てきましたが、MINI5ドアはファミリーからシニアまで幅広いニーズに答えることができるモデルです。国産のコンパクトカーからステップアップしたい方にもお勧めです。実際に日本ではMINI3ドアを凌ぐ人気モデルに成長しています。今後もMINI5ドアの安定した人気は続くでしょう。
試乗車は、MINI5ドアの「クーパーS」
2リッター ガソリンターボの上級モデル
今回試乗したモデルはMINI5ドアの「クーパーS(2017年式)」です。厳密には2016年に発売した人気の特別仕様車「クーパーS セブン」になりますが、クルマそのものは通常モデルのクーパーSとまったく同じです。セブンは通常モデルよりも標準装備が充実していて、シルバールーフや専用デザインのパーツを特別装備しています。
セブンの発売当初の新車価格は「約391万円」でしたが、価格改定により2017年現在は「約403万円」です。通常モデルのクーパーSより「約30万円」高となります。
クーパーSはBMWグループの「2リッター4気筒ガソリンターボエンジン」を搭載したスポーツグレードで、メッシュグリルのスポーティなルックスと192馬力を発揮するエンジンで爽快な走りが楽しめます。クーパーSはエンジンのポテンシャルが高く、チューニングパーツも豊富ですので、カスタマイズを楽しみたい方にも人気です。走りの面だけではなく、下位グレードではオプションとなるナビゲーションシステムやLEDヘッドライトなども付いていますので、充実した装備でゆったり走りたい方にもお勧めです。
この他のラインアップは、動力性能と装備を最小限に抑えたお手頃価格の「ワン」、軽快な走りとMINIならではのルックスが楽しめるスタンダードグレードの「クーパー」になります。
クーパーとクーパーSには「クリーンディーゼルエンジン」を搭載した「クーパーD」と「クーパーSD」も用意されています。燃費と力強さに優れるディーゼルモデルは、基本的にロングドライブや交通量の少ない郊外路をメインに活用される方にお勧めです。その代わりにアイドリング時の「カラカラ」という騒音や、低速時の振動が大きいというデメリットがあります。車両価格はガソリンモデルよりも「20万円」高となります。
エクステリアを徹底チェック!
MINI3ドアとは違う独自のスタイリング
MINI5ドアのスタイリングは、一言では表現できない特徴があります。発表された当初に比べれば見慣れてきましたが、改めて見てみると「面白いカタチだなぁ」というのが率直な感想です。MINI3ドアに比べると決してスタイリッシュではありません。しかし、どこからともなく「なんかカワイイ」という声が聞こえてくるような憎めない魅力があります。特徴的なLEDヘッドライトは、リング型に光って「丸い目」にさらなるインパクトを与えます。
フロントフェイスはベースとなっているMINI3ドアと全く同じですが、サイドスタイルは一昔のワゴンのように寸胴です。それでいて、バックのリアウィンドウはMINI3ドアよりもゆるい角度に寝かせてあって、オシリが少し出っ張ったようになっています。ハッチバックとワゴンを混ぜ合わせたようなハイブリッドなスタイリングです。
昨今のカーデザインでは、後席のドアを感じさせないように、キャビンからテールエンドへ収束するような流線形が用いられますが、MINI5ドアはあえて「後ろにもドアが付いてますよ!」とアピールしているようです。
MINI3ドアを無理やり引き伸ばしたようにも見えますが、全体的なイメージはMINI3ドアのキュッと引き締まったスタイルをうまく残しています。MINI3ドアに乗りたかった方に「ファミリーユースならば、便利なこちらをどうぞ!」と提案しているデザインだと思います。
ロングボディに見えますが、全長は4メートルちょうどです。これは同時期の「デミオ(2014年)」より6センチ短く、「フォルクスワーゲン ポロ(2014年)」とほぼ同じ長さです。しかし車幅はそれらより3~4センチほど大きいため、フロントからの印象はひと回り大きく見えます。
MINI3ドアの全長を伸ばして室内空間を確保したことで失われてしまった魅力もあります。MINI3ドアのサイドスタイルに比べると「人を乗せるためのボックス型」に映るため、趣味性の高いクルマから普通のファミリーカーに近づきました。クルマのデザインに限りませんが、利便性を追い求めると美しいカタチは崩れやすいため、これは仕方のないことでしょう。それよりも、MINIのキャラクターを残したまま後部座席が使いやすくなったことを評価するべきモデルです。
とはいえ、もともとMINI3ドアのスタイルが気に入っていた方が利便性をとってMINI5ドアを購入すると、巷でMINI3ドアを見かけるたびに「カッコイイなぁ」と思うかもしれません。MINI3ドアと5ドアでどちらを購入しようか迷っている方は「何を優先して何を捨てるのか」を自分の中で整理して検討しましょう。
リアはツインテールパイプでスポーティ
丸いヘッドライトのチャーミングなフロントとは対照的に、クーパーSのリアはスポーティなルックスです。クーパーS専用バンパーのセンターにはツインテールパイプ(マフラー)が備わっていて「ただのコンパクトカーではないよっ」と、秘めたる走りのポテンシャルを感じさせます。それと同時に、ボディに対してひときわ大きいキュートなテールランプが、緊張を和ませます。「羊」にも見えて「狼」にも見える、こんなところがMINIの面白さです。
なお、スポーティなルックスのテールパイプですが、日常的なアクセルワークにおいては非常に静かです。高回転域までグイグイ回すと、派手ではありませんがガソリンエンジンならではのレーシーなサウンドを楽しめます(注意:ディーゼルは楽しめません)。
バックドアの右下には「COOPER S」。ディーゼルモデルの場合は「COOPER SD」になります。エクステリアにおいて、ガソリンモデルとディーゼルモデルの違いは、このグレードネームだけです。
ちなみに、バックドアのハンドルはブラックになっていますが、メーカーオプションの「クロームラインエクステリア」を装着すれば、光り輝くクロームメッキ仕様になります。フロントとバックのバンパーにもクロームメッキの装飾が追加されて、全体的にキラキラ度がアップします。初期のモデルや「クーパー/クーパーD」には標準装備されています。ディーラーで後付けすると高価ですので、どうしても付けたい場合は初めから装着された車両を選びましょう。
インテリアを徹底チェック!
遊び心を残した、ちょっとイイ空間
インパネのデザインは、先代MINI(R56系)に比べるとグッと大人になりました。「ポップなインテリアは苦手だけど、遊び心は欲しい」といった方にもちょうどイイと思います。ようは「若者受けもよく(いい歳の)大人が乗っても恥ずかしくない」デザインです。このさじ加減がMINIの上手いところですね。
丸いスピードメーターやエアコン吹き出し口、エアコンの調整ダイヤルなど、「円」のカタチをした部分には「クロームメッキ(鏡面)」が装飾されています。ナイトドライブでは光を反射して、ちょっとリッチな気分にさせてくれます。
車両価格を考えると全体的な質感はもう少し頑張ってほしいとろこですが、メリハリのある立体的な造形のおかげで、嫌みの無い上級感があります。運転席はドライバーをやさしく包み込むような空間ではなく、マシンを操るためのコックピットに対峙するという印象です。競走馬の手綱を握るような「駆ける!」気持ちにさせてくれます。国産のコンパクトカーに乗っている方は、その世界観の違いにワクワクするでしょう。実際に、MINIに乗ったことのない方を助手席に乗せると、しばらくはインテリアの話題で持ちきりになります。
MINI5ドアの車幅は「1725mm」で、先代のMINI3ドアより「40mm」大きくなりました。私は先代も所有していましたが「少し広くなった」という感想です。外観はあきらかに大きくなりましたが、室内空間はそれほど大きな違いを感じません。車幅は国産車の「スイフト(2017年)」と同等ですが、それよりもコンパクトな空間に感じます。MINIのインパネデザインが「筋肉質」で「フラット」な面が少ないため、実際よりも狭く感じさせるのかもしれません。しかし、これをデメリットと感じる方はいないと思います。
マルチファンクションボタンが付いたレザーステアリングは、質感やグリップの大きさもよく、とくにクセのない使い心地です。手触りはサラっとしています。中央にメーカーのブランドロゴがくるのはお馴染みですが、MINIのロゴは存在感がありますので所有感を満たしてくれます。
左側のボタンはクルーズコントロール、右側は音量の調整やラジオ局の切り替えなど、主にオーディオ関連に使うもので、かなり使用頻度が高いボタンです。クルーズコントロールは、指定した車速を一定に保つ機能で、高速道路を長時間走るときの疲労軽減に役立ちます。車速を調整するボタンは二段階になっていて、軽く押すと「1km/h」深く押すと「10km/h」単位で増減できます。
なお、MINIは全モデルでステアリングの高さや前後の位置を調整できるので、小柄な方から長身の方まで、自分のベストポジションに調整することが可能です。もちろん、シートの高さを調整できるシートリフター(手動)も付いています。MINIは特殊なクルマに見えますが、そのあたりは国産車と同じで全く心配ありません。
ただし、ウインカーは国産車と逆で、左のレバーになります。間違えて右のレバーを使うと、ワイパーが動いてしまいます。初めてのMINIで「あるある」の1つです。
試乗車は特別仕様のため、専用デザイン(チェック柄)の「レザー&ファブリック スポーツシート」が装備されています。このシートのおかげで、室内空間がワンランクアップして見えます。通常モデルのクーパーS(SD)のシートは、同じ形状・機能の「ファブリック スポーツシート」になります。
スポーツシートは、体を支えてくれるサイドサポートと、座面の先端を伸ばせる機能が付いています。やや硬めですので、柔らかいシートがお好みの方は、1時間くらい走ると疲れを感じてしまうかもしれません。個人的には、1~2時間運転すると背中に少し疲れを感じます。しかし、座面を伸ばせる機能は、ロングドライブで疲れてきたときに活用すると本当にラクになりますので、基本的にはスポーツシートがお勧めです。ルックスも適度に引き締まっていて、スポーティな雰囲気をつくりだしています。
「ワン」や「クーパー」は、このような機能が無い標準シートになります。スポーツシートよりもゆったりした形状になっていますので、女性はこちらのほうが気に入るかもしれません。シートの相性はとても大切ですので、気になる方は標準シートの方も試してみてください。
MINI5ドアで最も気になるところは、なんといっても後部座席の広さでしょう。残念ながら、ファミリーカーとして評価すると「やや狭い」です。それでも、MINI3ドアよりは広いのでMINI5ドアを選ぶ価値は十分にあります。
写真は運転席のシートを男性の標準的な身長に合わせた位置にしています。この状態で後部座席に座ると、足元のスペースがもう少し欲しくなるくらいの広さです。小学生までならOKですが、中~高校生では狭さを感じると思います。運転者が長身の場合は、前のシートがもっと下がりますので、かなり厳しくなります。
家族の送り迎えや買い物など、日常的な利用シーンでは必要十分ですが、2~3時間以上のドライブではストレスを感じるレベルだと思います。例えば「お盆に家族で1日かけて帰省する」「大人の仲間4人で旅行に出かける」といったシーンではネックになりそうです。
また、シートバック(背もたれ)の角度がキツイため、リラックスした姿勢ではなく、背筋を起こした姿勢が求められます。リクライニングやシートを後ろにスライドさせることもできません。ちなみに、同世代のMINIで後部座席のリクライニングとスライドができるのモデルは、SUVの「MINIクロスオーバー(PHEVを除く)」のみです。
天井は一般的なコンパクトカーに比べて低いため、頭上はやや窮屈に感じます。サイドの窓は大きいので明るさや視界は良好です。シートは三人掛け(MINI3ドアは二人掛け)ですが、真ん中の席は足元のカップホルダーをまたぐカタチになります。そのため常用は二人までと想定しておくのが現実的です。
MINI5ドアの後部座席にエアコン吹き出し口はありませんが、ボディがひと回り大きい「MINIクラブマン」と「MINIクロスオーバー」には付いています。
フットスペースのサイズ感がイメージできるように、2リットルのペットボトルを置いてみました。ボトルのショルダーからキャップ部分がフロントシートの下に潜り込むくらいのスペースです。成人男性が座ると、膝とフロントシートの距離は握りこぶし1個くらいです。長身の方では膝がくっついてしまうかもしれません。例えば、成人男性4人で出掛ける時は、フロントシートを前よりにしなければならない「空気」になりそうです。
居住性については少し厳しい評価になってしまいましたが、全長4000mmのコンパクトカーとしては必要十分です。これまで「フォルクスワーゲン ポロ」や「スイフト」クラスに乗っていた方には許容できる範囲だと思います。いっぽう、ミニバンやボックス型のコンパクトカーに比べると窮屈感がありますので、これらからの乗り換えの場合は、ある程度の妥協が必要になるでしょう。
私が後部座席で最も気になった点は、開口部の狭さです。乗るときはそれほど気になりませんが、降りるときはかなり窮屈に感じます。靴の先でドア下の部分を蹴ってしまいそうになるため、余計に気をつかいます。冬に厚手の上着を着ている場合や、手荷物があった場合は、さらに難しい「脱出劇」になりそうです。ファミリーユースがメインとなる場合は、後部ドアに「蹴りアト」が多発するかもしれませんね。
何はともあれ、これまでMINI3ドアに乗りたかったのに、利便性のことを考えて諦めざるを得なかった方にとっては、待望の「使える後部座席」です。多少の不満があっても、メリットの方がはるかに大きく映るでしょう。
MINI5ドアの荷室容量は、MINI3ドアより約30%アップしています。奥行きも十分ありますので、日常的な買い物では不便を感じない広さです。4人でショッピングに出かけた場合をイメージすると、やや狭いかもしれませんが、このボディサイズでそこまでを望むのは厳しすぎますね。後部座席を倒して拡張することも出来ますので、いざとなったらゴルフバッグもOKです。
「ストレージコンパートメントパッケージ」が付いていると、荷室の床が二段式になります。床(フタ)を持ち上げると、床下収納のように深くなりますので、背の高い大きな箱などを運びたい時に便利です。いつも積んでお行きたい小物の収納スペースとしてもお勧めです。どちらかというと、床をオープンした状態の方が使い勝手がいいので、私のMINIは、ほとんどオープン状態にしています。
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純正ナビゲーションを徹底チェック!
タッチスクリーン非対応だが、デザインは秀逸
歴代のMINIから受け継がれているセンターサークルには、8.8インチディスプレイのナビゲーションシステムが搭載されています。ラジオやオーディオ、車両の各種設定、エンジンオイルなどのステータスチェックもここで行います。
ディスプレイは残念ながらタッチスクリーンではありません。主な操作はシフトレバーの近くにある「MINIコントローラー」で行います。クルクルっとダイヤルを回して項目を選択し、ダイヤルを押して決定!というインターフェースです。左右の画面移動にはダイヤルを「ガコガコっ」と左右に傾けて行います。最も利用頻度が高い地図のズームインズームアウトは、ダイヤルを回転させます。ダイヤルの天板はタッチパネルになっていて、文字の頭文字を入力したり地図のスクロール、パラメータのスクロールバーなどに対応していますが、実際にはほとんど使いません。
なお、MINIの開発元はBMWですので、基本的にはBMWのインフォテイメントシステム(iDrive)と同じインターフェースです。
これまでタッチスクリーンのナビを使っていた方にとっては「面倒くさい!」と感じると思います。なれれば、それほど不便ではありませんが、決して使いやすいとは言えません。特に文字の入力には非常にストレスを感じます。例えば、「ミ」を入力したい場合は、まず「マ行」を選択して決定、次に「マ行の中のミ」を選択して決定という4段階の操作が必要です。一般的なタッチ式ナビなら1回のタッチで済みます。ちなみに、よく使う機能は、ディスプレイ下のボタンに割り当てて、一発で呼び出すことも出来ますので、使い込めばそれなりに効率化も可能です。
使い勝手については苦言が多くなってしまいますが、画面のインターフェースデザインには満足できます。国産車にありがちな、ナビのインターフェースだけ「家電みたいなデザイン」ではなく、インパネと同じ「円」をコンセプトにまとめられていますので、インテリアとの統一感が非常に優れています。この点はオシャレなMINIにとって最も大事なポイントですね。
追記:「2018年のマイナーチェンジ」で、ナビがタッチスクリーンになりました。インターフェースデザインもイマドキのシンプルなものに変わっています。ナビの使い勝手に妥協できない方は、マイナーチェンジ後のモデルがお勧めです。
ナビは必須オプション
ナビはMINI3ドア/5ドアの「ワン」と「クーパー」ではメーカーオプションです。しかし、ほとんどの方がナビを希望するため、実質的に必須オプションになっています。ナビが付いていない車両には「社外品の取付キット」を使用して市販の最新ナビを組み込むことができます。
ナビそのものに目立った機能はありませんが、とくに不満のないレベルです。インターフェースが良くも悪くも独特なので、最初は戸惑うかもしれませんが、それもMINIのアジとして楽しめるでしょう。「MINIコントローラー」のダイヤルを回転させて操作するマップのズームイン、ズームアウトはスムーズかつ直感的で良好です。超ワイドなディスプレイを活かして、画面半分にナビ、もう半分にオーディオや走行ステータス(走行距離や燃費)など、好みの情報を並列して表示することができます。
地図データの更新はUSBメモリーで行います。更新データは新車登録から3年間無料ですが、ディーラーに更新をお願いすると工賃(4~5千円)がかかります。
テレビはディーラーオプション
テレビ(フルセグ/ワンセグ)はディーラーオプションになります。機器代と工賃を入れると10万円以上、一般のカスタムショップでも7~10万円ほどかかります。そのため中古車を購入する方でテレビが見たい場合は、テレビ施工済みの車両を選びましょう。中古車価格には殆ど反映されていませんので断然お得です。なお、安全上の理由により走行中は視聴できません(見たい場合は「コーディング」が必要です)。
CD/DVDの物理スロットが付いていないため、音楽はスマートフォンやUSBメモリーを使って再生します。スマートフォンをBluetooth(無線)またはUSBケーブルで繋ぐと、スマートフォンの中の音楽ファイルや、「spotify」「Amazon Music」などのオンライン音楽も聴くことができます。もちろん、USBメモリーに入れた音楽ファイルをそのまま聴いたり、それをナビのミュージックサーバ(20GB)に入れておくことも可能です。
気になる音質は「とくに悪くはない」というレベルですが、先代MINIの標準スピーカーに比べると格段に透明感のあるサウンドになりました(低音の迫力は物足りない)。高音と低音のバランス調整や、音の発信位置(車内の前方、真ん中、後方)の設定もできます。音質にこだわる方は、メーカーオプションの「harman/kardon製 HiFiスピーカーシステム」を付けておくのがお勧めです。ただし、約12万円しますので、その予算でカーオーディオ専門店にサウンドチューニングを依頼するのもアリでしょう。
動画の再生は非対応
動画ファイルの再生には対応していません。動画を再生したい場合は「コーディング」が必要です。追記:「2018年のマイナーチェンジ」で採用されたタッチスクリーンのナビでは、標準で動画の再生が可能です。
ディスプレイの周りにはカラフルなLEDリングが備わっています。このLEDリングは、第3世代MINIのインテリアを象徴するポイントで、発表当初は注目の的となっていました。これを「うるさい」と感じる方もいるでしょう。賛否ありますが、私はMINIらしくて面白いと思っています。設定で消すこともできますので安心してください。
LEDリングは単純に点灯するわけではなく、エンジンのオンオフやエアコンの温度設定、エンジンの回転数と連動して、流れるようにグラデーション点灯するなど、様々なアクションを魅せてくれます。ドライバーの操作に対して、MINIが返事をしてくれているような対話的な演出が楽しめます。運手中にまじまじと見るものではありませんが、なんとなく賑やかなグラデーションがふとした瞬間に目に入ってきます。もうそこはMINIワールドです。
カラーチェンジ(必要:MINIエキサイトメントパッケージ)も出来ますので、レッドやイエロー、パープル、ブルー、グリーンなど、その時の気分によって車内を彩ることができます。完全にお遊びの機能ですが、これが意外に面白いです。足元やドアポケットの照明も同色になりますので、ナイトドライブがちょっと楽しくなります。すべてのカラーを次々に自動で切り換えていくモードもありますが、これはさすがに落ち着きません^^。
▼ 純正ナビをもっと詳しく解説
ドライビングフィール
5ドアでも楽しい! MINIのスポーツマインド
クーパーSを走らせた第一印象は「低速からスムーズで軽い、良い意味で普通」というものでした。
クーパーSの搭載エンジンはBMWグループの「2リッター直列4気筒 ガソリン ターボ」。最大出力は192ps、最高トルクは280Nmです。昨今の2リッターターボとしては控え目なスペックですが、コンパクトで軽量なMINIでは、その数値以上に速く感じさせます。
トランスミッションは日本のアイシンAW製「6速AT」。MINI3ドアは6MTも選べますが、MINI5ドアはATのみです。マニュアルモードが付いていて、シフトレバーを左に倒すとエンジンの回転数があがる「Sモード」、そのままレバーを前後に入れるとシフトチェンジができます。1度でもシフトチェンジを行うと、そこからは完全なマニュアルモードになります。シフト選択はすべてドライバーに委ねられますが、エンジンの回転数が上限に達すると自動でシフトアップします。
パドルシフトはメーカーオプション
ステアリングのスイッチでシフトチェンジができるパドルシフトは、スポーツATとのセットでメーカーオプション(ディーラーで取付不可)になります。試乗した「セブン」には装備されていませんが、MINIに詳しい「カスタムショップ」で後付けすることが可能です。「John Cooper Works ステアリング」への変更が必要になりますので、費用は10万円以上かかります。中古車を購入する場合は、パドルシフト付きの車両を優先的に選びましょう。
インパネの赤いトグルスイッチを押してエンジンを始動させると、テールパイプ(マフラー)から「ポポンっ」とスポーティなサウンドが耳に入り、走る気持ちを盛り上げてくれます。これはディーゼルのクーパーSD(170ps/360Nm)には無い演出です。このようにワクワクさせるマフラーサウンドを楽しめるのが、ガソリンエンジンのメリットのひとつです。
車内のアイドリング音は、聞き耳を立ててみると、やや大きいことに気が付きます。ストレスに感じるほどではありませんが、静粛性の高いハイブリッドに乗っている方は気になるかもしれません。
※燃料計のデザインは「2017年7月の仕様変更」からメモリタイプに変更
アクセルを軽く踏み込むと、地面を滑るようにスルスルっと進みます。スムーズで軽く、そして静かに車速が上がっていきます。低回転(1250rpm)から最大トルクを発揮するため、出足にもたつきもなく、2リッターエンジンの余裕を感じさせます。この時点では、スポーティというよりも、ちょっといいクルマという印象です。先代MINIの「1.6リッター直列4気筒 ガソリン ターボ」に比べると、明らかに洗練されています。エンジンが冷え切った状態でも、ガサツな音は聞こえてきません。
アイドリングストップからのエンジン再始動は、素早く立ち上がり振動も少ないためノンストレスです。インパネのスイッチで無効に出来ますが、エンジン始動時は必ず有効になります。ちなみに「コーディング」を行えば、エンジンを停止した時点の状態を保持することができます。つまり、エンジン始動時に無効にしておくことが可能です。
ディーゼルはアイストが苦手
クーパーSDのアイドリングストップからのエンジン再始動は、振動が非常に大きいです。再始動する度に「ドンっ(下から突き上げるような振動)→ カラカラ(アイドリング音)」です。振動の大きさは一定ではないため、ほとんど気にならない時もありますが、交通渋滞でストップ&ゴーが頻繁に発生するような状況では、かなりのストレスになります。
ググっとアクセルを踏み込んでみると、あっという間に制限速度まで到達します。シートに体を押さえつけられるような加速ではありませんが、これまでスタンダードなクルマに乗っていた方にとっては「速さ」を十分に感じられるレベルです。加速したい気持ちに素直に反応して「スイスイっ」と前に押し出してくれます。それでも「まだ本気出してないぜ!」と言わんばかりにエンジンは平然としていて、排気音も耳に入ってきません。こんな瞬間に「クーパーSにして良かった」と思うはず。また、日常的なアクセルワークで速く走れると、車体が軽く感じますので、運転の疲労軽減にも役立ちます。
先代MINIよりも明らかに良くなった6速ATも、その存在を感じさせないほどスムーズです。エンジン回転数は、市街地をゆったり運転すると「1500rpm」前後、グッと加速して「2000rpn」を超える程度です。おおよそ「2500rpm以下」で、流れに沿った走行ができます。この回転域では、静かでマナーの良いクルマを演じてくれます。クーパーSDも同じATですが、ディーゼルエンジンの出力特性のためか、クーパーSよりもシフトショックを感じます。
クーパーSのポテンシャルを確かめるため、低速からの追い越しを想定した急加速を試してみました。車速を30km/hに保ち、そこからアクセルを一気に床まで踏み込みます。若干のターボラグのあとエンジンが瞬時に吹き上がり「グイーンっ」と加速していきます。アクセルを戻すとテールパイプから「バフっ」というサウンドのオマケが付き、間髪入れずに、また踏み込みたい気持ちを誘います。
期待した通り、ガソリンエンジンならではの気持ちの良い加速フィーリングが体感できました。市街地での追い越しでも、ちょっとしたスポーツカー気分を楽しめます。高速道路などの直線距離が長い追い越しでは、さらなる実力が発揮されるはずです。
今回のように一般道で出せるスピード域(~60km/h)に限ると、加速と、その立ち上がりのレスポンスは、トルク(360Nm)が大きいクーパーSDの方が刺激的です。つい「おおっ」と声が出てしまうような突発的な加速をします。そのときのエンジンサウンドは荒々しく「ズドーンっ」です。アクセルをそこまで踏み込まなくても、シートに体を押さえつけられる加速が日常的に楽しめます。
しかし、出足のスムーズさやエンジンのシャープな吹き上がり、エンジンとマフラーのサウンドを含めた全体的なフィーリングは、クーパーSのほうがスポーティ(俊敏)です。一般的に、運転していて素直に「楽しい、気持ちイイ」と感じるのはクーパーSの方でしょう。クルマと自分が一体になったような操舵感と加速が楽しめます。クーパーSが足にピッタリフィットするランニングシューズだとしたら、クーパーSDはトレッキングシューズのようです。個人的には、荒々しい挙動で豪快に加速するクーパーSDのファンになってしまいましたが、誰もが笑顔でドライブできるのはクーパーSです。
いっぽう、スポーツモデル(ホットハッチ)として評価すると、もう少しパンチ力が欲しいというのが正直な感想です。欲を言えばきりがありませんが、200馬力以上のスポーツモデルに乗っている方は、どこか物足りなさを感じるかもしれません。やんちゃなルックスやクーパー「S」という名前から期待する加速やレスポンスに、あと一歩足りないという印象です。それでも、クーパーSは社外品のチューニングパーツが沢山リリースされていますので、チューニングのベース車として、十分に楽しめると思います。
MINIで走りを極めるならJCW
MINI3ドアにはハイパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が設定されています。クーパーSをベースにしたチューニングモデルで、「231ps/320Nm」を発揮するエンジンと、走りを楽しくする装備や専用のエアロバンパーなどを持つ、スペシャルなホットハッチです。
※ドライビングモードのスイッチは「2017年7月の仕様変更」から写真右のタイプに変更
試乗した「セブン」には付いていませが、クーパーSを100%楽しむにはメーカーオプションの「MINIドライビングモード」が必須です。MINIドライビングモードを付けると、アクセルレスポンスが向上してハンドルも重くなる「SPORTモード」と、燃費重視の「GREENモード」が選べるようになります。
クーパーSは「SPORTモード」で元気に走らせると、アクセルオフで「パパパーンっ」というレーシーな排気音が楽しめます。音量は控え目ですが、やんちゃなクルマ好きにはたまらない演出でしょう。これはディーゼルでは楽しめないガソリンエンジンの特権です。ステアリングが重くなるので曲がり角の多い街乗りには適しませんが、速度域の高いワインディング(山岳路)や高速道路ではキビキビと扱えます。スピーカーからは誇張したエンジンサウンドが放たれて気分を盛り上げてくれます。高回転までひっぱれば、なかなかの迫力です。
「GREENモード」は、約50km/h以上の時、エンジンとトランスミッションを切り離して惰性で走行するコースティングができますので、郊外や高速道路を巡行するときに燃費を飛躍的に伸ばすことができます。アクセルレスポンスはマイルドになりますが、ゆったり走る方は「GREENモード」で満足できると思います。コースティングが作動すると「スーッ」と進みます。ディーゼルではエンジンの低回転時に発生する振動が軽減されますので、特にお勧めです。
さらにドライビングモードは、ATに付いている「Sモード(シフトレバーを左に倒す)」と組み合わせれば、よりスポーティなフィーリングを楽しむことができます。Sモードにすると、エンジンの回転数がアップしてレスポンスが俊敏になります。一番スポーティな組み合わせは、言うまでもなく「Sモード&SPORTモード」です。クーパーSのポテンシャルが解き放たれて、別のクルマになったと思うくらい豹変します。このほか「Sモード&GREENモード」「Sモード&標準モード(MIDモード)」も、それぞれ特徴のあるフィーリングを持っています。市街地で意外に楽しいのがGREENモードとの組み合わせです。
ドライビングモードは後付け可能
ドライビングモードはメーカーオプションですが、MINIに詳しい「カスタムショップ」で後付けすることができます。走りを選ぶ楽しみがグンと上がって、費用も手ごろ(3~4万円)ですので大人気です。
MINI5ドアのハンドリングは、クセが無く素直な印象です。これまで国産のコンパクトカーに乗ってきた方でも、ほとんど違和感なくステアリング操作が行えると思います。交差点で左折するときも「スルスルっ」と回転して、重さをまったく感じさせません。車線変更では、加速の気持ち良さと上手くリンクして、適度な手ごたえを与えつつ、初めから終わりまでスマートに取り扱うことができます。
MINIは遊園地のゴーカートのように「よく曲がります」。これはMINIの伝統的な特徴の1つで「ゴーカートフィーリング」と呼ばれています。ステアリングを少しきっただけで「クイっ」と方向が変わるイメージです。初代MINIに比べると、だいぶ「普通」になりましたが、当モデルにもクイックな味付けは残っています。そのため、タイトなコーナーが続くワインディング(山岳路)で、右へ左へとステアリング操作が要求される場面では、思わず「楽しー!」と独り言をいってしまうほど、キビキビ曲がります。これまでソフトなハンドリングのクルマに乗っていた方は「コーナーを曲がる楽しさ」に目覚めてしまうかもしれません。
その反面、ステアリングにアソビが少ないため、長時間運転すると疲れるというデメリットもあります。個人的には、中~高速で長いコーナーを曲がっている時に「ステアリングが落ち着かないな」と思うことがあります。しかしこれは個人差が大きいので参考程度にしてください。実際のところMINIを何年も乗り継いでいる私は、このハンドリングが「普通」になってしまっています。
乗り心地は一般的なコンパクトカーに比べると「かたい」です。平坦な道では剛性の高いボディに包まれた安定感があります。質実剛健なドイツ車のイメージそのものです。しかし、大きな段差を乗り越えた時は「ガツンっ」ときます。ボディがキシむような安っぽい衝撃ではありませんが、人によってはストレスを感じるレベルです。踏切などの小さな段差でも、「ゴツゴツ」という感覚がハッキリと伝わってきます。クーパーS(SD)で標準となっているスポーツシートが少しかたいので、その影響も若干あると思います。それでも先代MINIの3ドアに比べると、角が取れたようなワンランク上の乗り心地です。「ふわふわ」した乗り心地が好みの方は、厳しいかもしれません。
乗り心地の改善
クーパーSに標準装備されるタイヤは、2016年4月から「16インチ → 17インチ」に変更になりました。乗り心地は16インチの方が、ややソフトになります。乗り心地を大きく改善したい場合は、社外品のサスペンションに交換する方法があります。
ちなみに、MINI5ドアはMINI3ドアよりもホイールベース(前輪軸と後輪軸の長さ)が長いため、3ドアよりも僅かに乗り心地が良いようにも感じますが、私の中では「ほぼ同じ」という評価です。
まとめると「クイックなハンドリング」に「ちょっとハードな乗り心地」という感想で、とっつきにくいクルマに見えるかもしれませんが、だからこそ運転していて楽しいのです。MINI5ドアは、ファミリーカーの役目も担いながら、クルマのダイレクトな反応を感じて操る楽しさも満喫できます。
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実燃費を検証! 走行テストの結果
市街地と郊外、2つのルートで燃費をチェック!
MINIのように趣味性が高いクルマでも、燃費は大事です。購入前はデザインや加速性能に胸が躍って、燃費は二の次という意識になりがちですが、購入後に日常のアシとして使い始めると、ジワジワと存在感を増してくるのが「燃費」です。
燃費が良いと毎週のように遠方に出掛けたくなったり、ワザと遠回りしてプチドライブを楽しみたくなります。つまり、燃費もクルマの楽しさを左右するポイントの1つです。
そこで、気になる実燃費をチェックしてみました。市街地中心の「ルート1」、郊外中心の「ルート2」を走行して、それぞれの燃費を計測しました。
比較対象として、当サイトのデモカーである「MINI3ドア クーパーSD(ディーゼル)」の燃費も計測しました。MINI5ドア クーパーSの車両重量は、MINI3ドアのクーパーSDより「30kg」重くなっていますが、燃費に与える影響は誤差の範囲とします。このほか、可能な限り同じ条件で走行しています。
実燃費テストの前提条件
- アイドリングストップ:オフ
- ドライブモード:標準(MIDモード)
- クルーズコントロール:オフ
- エアコン:オフ
- 外気温:12~13度
- エンジンが冷えた状態からスタート
- 法定速度厳守、急加速をしない運転
- 乗車人数はドライバー1人
なお、当燃費テストでは、車両の燃費計(オンボードコンピュータ)に表示される値を実燃費としています。より正確な燃費が分かる「満タン法」ではありません。
ルート1:市街地の実燃費
ルート1は、交通量の多い日中の市街地です。信号機は2つに1つ止まる程度で、平均的な巡航速度は40~50km/hになります。朝夕の通勤ラッシュより交通の流れはよいが、60km/hで巡行できる区間は少ないという状況です。走行時間は約1時間、走行距離は19kmです。
クーパーSの燃費は「ハイオク:9.9km/l」、クーパーSDの燃費は「軽油:15.6km/l」でした。
カタログ燃費(JC08モード)は、クーパーSが「16.4km/l」、クーパーSDが「23.8km/l」です。ストップ&ゴーの多い市街地をアイドリングストップ無しで走行しましたので、やや厳しい結果となりました。アイドリングストップを使えばクーパーSでも「11km/l」以上は可能だと思います。それでも、真夏にエアコン(冷房)をかけると「10km/l」に届かないかもしれません。試乗車には付いていませんが、MINIドライビングモードの「GREENモード」を使えば、市街地ではプラス「0.5~2km/l」が期待できます。
クーパーSDは、ハイブリッドには及ばないものの、ガソリンエンジンの国産コンパクトカー並みの燃費を実現しています。動力性能は格段に上回りますので、ディーゼルエンジンは走りの力強さに対するコストパフォーマンスが非常に優れています。しかも燃料はレギュラーガソリンよりも安い軽油です。
ちなみに、エンジンが完全に冷えた状態からのチョイ乗り(15分程度)では、燃費はさらに厳しくなります。そのような乗り方が多い場合は、同条件(秋~冬)でクーパーSが「7~8km/l」、クーパーSDが「12~13km/l」程度と想定しておいてください。暖かい春~夏では、そこまで悪化しません。
ルート2:郊外の実燃費
ルート2は、交通量の少ない日中の郊外です。巡航速度は50~60kmで、信号機で止まることがほとんど無い状況です。郊外としましたが、バイパス道路や海岸線、川沿いなどの長く平坦な道をイメージしてください。走行時間は約1時間、走行距離は40kmです。
クーパーSの燃費は「ハイオク:14.5km/l」、クーパーSDの燃費は「軽油:20.9km/l」でした。
ストップ&ゴーが極端に少ない道路状況のため、カタログ燃費から約10%落ちの燃費になりました。アイドリングストップ無しの影響は殆どありません。このようなルートの場合は、MINIドライビングモードの「GREENモード」を使えば、コースティング(惰性走行)がフル活用できますので、プラス「1~3km/l」が期待できます。
つまり、交通量が少ない郊外で「GREENモード」を使えば、クーパーSでもガソリンエンジンの国産コンパクトカー並みの燃費が実現できます、もちろん、同条件でコンパクトカーを走らせれば、もっと良い燃費になりますが、クーパーSの動力性能を差し引けば悪くない結果です。休日に海や山へロングドライブするときの参考にしてください。あくまでも、急加速をしないリラックスした運転が前提です。
1時間の燃費テストを終えた後、さらに1時間ほどクーパーSを走らせてみました。燃費は「15.5km/l」で頭打ちでした(今回のテスト条件において)。クーパーSDは、これまでの経験上、このようなルートを2時間以上走らせるとカタログ燃費を超える「24~25km/l」まで可能です。ディーゼルは長時間巡航させると、燃費が飛躍的に伸びます。この時の燃費を燃料費に換算すると、驚くことにレギュラーガソリンのハイブリッドに近いレベルになります。
まとめると、今回のテスト条件において、クーパーSの実燃費は、街乗りで「10~12km/l」、交通量の少ない郊外で「14~16km/l」です。高速道路ではカタログ燃費を超える「18~19km/l」まで期待できるでしょう。燃費が最も伸びるのは、今回のテストよりも速い「70~80km/h」の巡行ですので、走らせ方によっては、もう少し上を目指せます。なお、エアコン(冷房)を入れると、マイナス「1~1.5km/l」になります。
燃費だけを見るとパッとしませんが、クーパーSはエコカーではなく走りを楽しむクルマですので、受け入れられる範囲かなと思います。低燃費ではないが、極端に悪いわけではありません。ガソリンが値上がりすると「10km/l」でハイオクというのは精神的に堪えますが、それは「楽しさとのトレードオフ」という捉え方で乗り切るしかないですね。
ディーゼルは速い!?
今回の燃費テストで初めて気が付いたのですが、クーパーSDはクーパーSと同じように運転(アクセルワーク)しても平均速度が「5~7km/h」ほど高くなってしまいます。低回転のトルクが太いため、知らず知らずのうちに速度が出ているようです。クーパーSに近い平均速度にするには、アクセルを意識的に緩く踏む必要がありました。しかし、スピード感はクーパーSの方が勝ります。クーパーSDよりも振動やノイズが少ないため、「スムーズ=速い」と感じるのかもしれません。
クーパーSとクーパーSDの燃料費を比較
クーパーSDは「1万kmで5万円以上」お得!
実燃費 | 燃料 | 1万km分の燃料費 | 給油回数 | |
---|---|---|---|---|
MINI5ドア クーパーS |
12km/l | ハイオク 148円 |
123,284円 | 18.9回 |
MINI3ドア クーパーSD |
17km/l | 軽油 115円 |
67,620円 | 13.3回 |
クーパーSとクーパーSDの燃料費を、実燃費を元に算出してみました。ここではクーパーSの平均燃費を「12km/l」、クーパーSDを「17km/l」とします。燃料価格を全国平均(執筆現在)の、ハイオク「148円」、軽油「115円」とした場合に、1万km走行するために必要な燃料費はクーパーSで「123,284円」、クーパーSDで「67,620円」です。
クーパーSとクーパーSDの差額は「1万kmで、55,664円」になります。
1年で1万km走行した場合、3年分(3万km)の差額は「166,992円」になります。これは、ざっくりいうと新車登録から3年目の初回車検にかかる費用に相当します。バッテリーなどの高額な消耗品の交換が必要になると、これよりオーバーしてしまいますが、いずれにせよ大きな差額です。
つまり、クーパーSDはクーパーSに対して「3万km乗れば、燃料費の差額で車検代分が実質無料」ということです。浮いた燃料費で毎年の自動車税(約4万円)が支払えるという考え方もできます。車検を通さずに乗り換えるならば、次に購入する車の諸経費に相当するという考え方もアリでしょう。
ちなみに、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのメンテナンスコストは、まったく同じではありません。個別の使用状況によって異なりますが、細かな話になってしまいますので、ここでは同レベルとします。
同様に7年分(7万km)の差額は「39万円」、10年分(10万km)では「55万円以上」になります。この差額を大きいと感じるか、小さいと感じるかは人それぞれだと思いますが、少なくともガソリンエンジンにコダワリが無い方にとっては魅力的な差額です。50万円あれば、次に買う車の頭金になります。リッチな海外旅行も行けますね。
ディーゼルは中~高速巡行の燃費が飛躍的に伸びますので、ロングドライブが多い場合は、さらに大きな差額になります。平日にはほとんど乗らず、休日に200~300kmのロングドライブをされる方は、ディーゼルの経済性をフルに発揮できます。
クーパーSDの新車価格はクーパーSよりも「20万円」高いので、燃料費で元を取るには数年かかるという考え方がよく聞かれます(エコカー減税(2017年現在)で実質の差額は10万円以下)。中古車の場合も、同じ車両条件ならクーパーSよりクーパーSDの方が高くなりますので同様の考え方ができます。
しかし、その考え方は「下取り価格が付かないレベルまで乗りつぶす前提」の話です。新車で買って3~7年で手放す、あるいは、1~2年落ちの中古車を買って10年落ちになる前に手放す場合は、同じ車両条件ならばクーパーSDの方が高値がつくはずです。買った時の差額までは難しいと思いますが、クーパーSよりも5~10万円アップは期待できます。買い取り価格は中古車市場の人気によって大きく左右されますので絶対とは言い切れませんが、日本では欧州車のディーゼルは人気上昇中ですので、おそらく大丈夫です。中古車市場の動向によっては、もっと有利に働くかもしれません。
簡単にいえば、燃料費で購入額の元を取るという考え方は、それほど気にしなくてOKというのが私の考え方です。
それでもクーパーSを選ぶメリットは?
クーパーSとクーパーSDで迷っている場合は、クーパーSのメリット(静粛性、軽快でスポーティな走り)に対して「1年で5.5万円」「10年間で55万円」を余分に支払う価値を見出せるかどうか自問自答してみてください。クーパーSDのデメリット(騒音&低速域での振動、加速は力強いがスポーティなサウンドは楽しめない)も考慮してください。「走りの楽しさ VS 経済性」の戦いがそこにあります。クーパーSDの走りが退屈というわけではありません、クーパーSに対して経済性が圧倒的に優れているという意味です。
クーパーSDの燃費について詳しく知りたい方は「ホントに低燃費?ミニクーパー ディーゼルの燃費を徹底検証!」を参照してください。
総評
「走れて使える」日常系のMINI、入門モデルとしても最適
MINI5ドア クーパーSの試乗を終えて強く感じたことは「MINI3ドアのクーパーSに限りなく近い実用車」ということです。
5ドアのハッチバックとしてゼロから設計すれば、もっとイマドキなスタイリングで実用性も高めることができます。しかし、それではMINI本来のキャラクターとはかけ離れてしまいます。「ミニマムなデザインでキビキビ走る」という「MINI3ドアらしさ」を捨てることなく、後ろに人も荷物も乗せられる絶妙な妥協点でまとめ上げられたのがMINI5ドアです。クイックなハンドリングやマフラーサウンドが物語るように、クーパーSのスポーツ性も十分に兼ね備えています。
MINI3ドアのクーパーSをファミリーユースの面で諦めていた方には、素直にお勧めできるモデルです。それだけではなく、MINIの入門モデルとしても最適です。「ほとんど1人で運転するけど、いざという時に後部座席にドアが無いのは不便すぎて、購入する勇気がない」という方にもピッタリでしょう。これからは、MINI5ドアでMINIファンになって、MINI3ドアへ乗り継ぐという逆転現象があるかもしれません。
家族や仲間と出掛けるときは、2リッターのターボエンジンが持つ余裕のパワーでスイスイっと優雅にドライブ。1人の休日にはワインディング(山岳路)で「SPORTモード(オプション)」をオン、エンジンの吹き上がりと胸躍るスポーティなサウンドでストレス解消! という2つの使い方ができるモデルです。ほとんどのアフターパーツがMINI3ドアと共通ですので、カスタマイズも存分に楽しめます。
燃費が良いクーパーもお勧め
スポーツ性はそれほど必要ないという方には、1.5リッター3気筒ターボエンジンの「クーパー」がベストです。3気筒ですので振動が少し気になりますが、燃費はクーパーSよりも優秀です。パワーも必要十分ですので、街乗りメインでゆったり運転される方には扱いやすいと思います。1.5リッター3気筒ディーゼルターボの「クーパーD」は、トルクフルで燃費が良いため頻繫にロングドライブされる方に最適です。ただし交通量の多い街乗りでは、低速時にディーゼルのデメリット(騒音や振動)を感じやすいので、それが我慢できるレベルかどうかを試乗で体感してから検討してください。
では、MINI5ドアの気になる点は?というと「スタイリング」「後部座席の居住性」「乗り心地」の3点です。
MINI3ドアをそのまま引き伸ばしたような「スタイリング」は、MINIファンの中でも賛否両論があります。私も初めて見たときは素直に受け入れることができませんでした。この独特な5ドアスタイルを「カッコイイ」と思うのか、「個性的で面白い」と思うのか、ファミリーユースのための「妥協点」とするのか、様々な受け取り方があると思います。当然のことですが、運転している最中はまったく気になりません。しかし、駐車場に止めて、ふと振り返ると、MINI3ドアのキュッと引き締まったスタイリングとは「思った以上に違う」ということに気がつきます。ずっとMINI3ドアに乗りたいと憧れていた方には、このギャップは次第に大きくなっていくかもしれません。
5ドアをスポーティにするパッケージ
スポーティなルックスがお好きな方は、エアロバンパーやリアスポイラーが備わる「ジョンクーパーワークスパッケージ」がお勧めです。MINI5ドアのファミリー感が減って、やんちゃで速そうなスタイリングにグッと近づきます。
「後部座席の居住性」と「乗り心地」は、同クラスのコンパクトカーに比べて、優れている点は特にありません。かといって大きく劣っているわけではありませんが、後部座席から降りるときの窮屈さや、ハードな乗り心地は、ライバル車に対してウィークポイントになりえます(特に女性目線の場合)。カップホルダーや小物収納などのユーティリティも、いたって平凡です。動力性能が高いとはいえ、街乗り燃費の悪さは積もり積もって日々のストレスになります。
つまり、MINIの「キャラクター」や「走りの楽しさ」にそれほど思い入れがなく、単純に「オシャレな欧州コンパクトに乗りたい」あるいは「国産コンパクトから輸入車にステップアップしたい」というだけならば、不満な点ばかりが目についてしまう可能性があります。そんな方は「後ろもそれほど広くないし、乗り心地も悪い、燃費もイマイチ」という評価に落ち着くでしょう。
装備のわりに車両価格も高く設定されているため、コストパフォーマンスという面からも、それに拍車をかけます。MINIは中古車でも人気ですので、中古価格も高い傾向にあります。「いいクルマだけど、この装備でコレは高すぎる」と言って購入を辞める方も少なくないと思います。
話を戻すと「MINIが好き」ならば、実用的でスポーツ走行も楽しめる「MINI5ドア クーパーS」は、多くの方にお勧めできます。MINIのラインアップの中で「普通に使えて、走りも楽しい!」という面では最もバランスが良いと思います。
MINI3ドアほど尖った魅力はありませんが、日常のアシとして使っていくうちに「ジワジワと愛着がわいてくるモデル」であることが想像できます。家族や友人と出掛けることが増えたり、趣味の道具を沢山積んで走り回ったり、ユニオンジャックのグッズで可愛くドレスアップしたり、家族に内緒でやんちゃなチューニングパーツを付けたり・・。そんな守備範囲の広いカーライフが気楽に楽しめるクルマです。
室内の広さに不満ならクラブマンを検討
後部座席の広さを優先させたい場合は「MINIクラブマン」も要チェックです。ボディサイズがMINI5ドアよりひと回り大きいため、走りのキビキビ感は薄れますが、室内が広くてロングドライブが快適です。「BMW 2シリーズ」や「フォルクスワーゲン ゴルフ」「アウディ A3」と同じクラスになります。
価格とスペック、お勧めオプション
MINI5ドア クーパーS/クーパーSD
MINI 5ドア (F55) | ||
---|---|---|
クーパーS | クーパーSD | |
国内発売日 | 2014年10月 | 2016年4月 |
国内価格(税込) 2017年11月時点 |
374万円 | 394万円 |
変速機 | 6速AT | |
エンジン | ガソリン ターボ | ディーゼル ターボ |
2.0L 直列4気筒 | ||
最高出力 | 192ps(141kW) 5000rpm |
170ps(125kW) 4000rpm |
最大トルク | 280Nm 1250-4600rpm |
360Nm 1500-2750rpm |
加速 0-100km/h | 6.8秒 | 7.3秒 |
燃費(JC08) | 16.4km/L | 23.8km/L |
燃料 | ハイオク | 軽油 |
定員 | 5名 | |
全長/全幅/全高 | 4015×1725×1445mm | |
ホイールベース | 2565mm | |
最小回転半径 | 5.6m | |
荷室容量 | 278L(最大941L) | |
その他 | 主要諸元 | |
主な標準装備 | ナビ(詳細)/ETC/Bluetooth/オートエアコン/レザーステアリング/LEDヘッド&テールライト/LEDフォグランプ/スポーツシート/17インチアロイホイール | |
マイナーチェンジ | 2018年5月(マイナーチェンジの詳細) クーパーSのトランスミッションは、6速ATから「7速DCT」に変更/ヘッドライト&テールライトのデザイン変更/ボディカラーの追加・廃止/ナビをタッチパネル対応の新バージョンに変更/衝突回避・被害軽減ブレーキとアクティブクルーズコントロールを標準化 ほか |
※当記事で試乗したモデルは、2016年8月に発売した特別仕様車「MINIセブン クーパーS」です。
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